システム再構築でよく聞く「現行踏襲」という言葉の意味

ITエンジニアの仕事
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 これまで何案件も従来システムから新システムへのリプレイスを行ってきました。その作業の中で本当に良く聞くのが「現行踏襲」と言う言葉です。

 この言葉にはシステム開発においてどんな意味があるのでしょうか。

「現行踏襲」とは

 よくある文章のはじまりですが、「現行踏襲」はどういう意味なのでしょう。

 検索してみると「従来と同じ操作方法で同じ機能が利用できる状態を指す言葉」とあります。つまり現在使っているシステムや機器で実装されている機能を、これから開発又は購入するシステムや機器でも同じ操作で利用できるようにする。と言う事です。

この言葉のシステム開発においての意味

 「現行踏襲」と言う言葉はシステム開発の場面で本当に良く出てきます。

 例えば従来、汎用機で動作していた顧客管理システムをLINUXベースのWebシステムに乗せ換える場合や、現在は自社サーバ上で動作していたWebシステムをクラウドサービスに乗せ換える場合です。

 「現システムで実装されている機能は現行踏襲される事を条件とする。」とか「この機能に付いては現行踏襲し実装する。」と言った使われ方になります。

 要は「今使っているシステムの機能、動作、ユーザインターフェーズを落とすことなく、新しいシステムでも使えるようにしなさい」と言う意味なのです。

 システム開発のどの工程やフェーズでよく使われるかと言うと、開発の計画と要件定義とあとはユーザテストのフェーズで使われることが多い言葉です。

 開発計画や要件定義では現在使っているシステムから次のシステムに今の機能をそのまま引き継ぎたいと時に用いられ、ユーザテストの段階では、新システムを操作してみて、従来のシステムとの違いを検出した時に指摘する言葉として用いられることが多いのです。

「現行踏襲」と言う言葉の便利さと怖さ

 なぜこの言葉だけあえてと取り上げるか。

それはこの言葉には便利さと怖さの両面があるからです。

まず便利さ。これは開発を依頼する企業側としては非常に便利な言葉です。

システムを長年使うと大なり小なりの改修が入り、システム全体や詳細まで把握する事が難しくなります。それでもシステムの置き換えは必ず必要は生じます。そこでまずシステムの再構築の条件として「現行踏襲」とするとすれば、現行システムの機能は保証される訳です。

あえて要求事項を詳細に記入したりしなくても、今の機能を調べて、その通りに実装してください、と言う事で依頼側として方針のような形で新機能の要求ができる訳です。

 ではその言葉の怖さ。それは反対の立場のシステム開発を依頼された開発担当側には非常に怖い言葉になります。

 前述の通り、現在使っている会社の人でさえ、どんな機能が含まれてるか分からないシステムの再構築する為に、「現行踏襲」と表記されている場合には詳細に調査しなければならなくなります。もしシステム開発全体の前提条件として「現在のシステムの機能は現行踏襲する事」などと書かれていた場合には、ソースレベルまで詳細に調べ、実装する必要が生じ、要件定義や機能設計での反映漏れは許されなくなります。

 またユーザテスト段階で、実際利用中のユーザから機能の利用感やユーザインターフェースが異なり、使いにくい印象や違和感を感じられた場合、「現行踏襲されていません。」と言われると対応せざるを得なくなります。

 要件の機能を満たし、新しい方法の方が使いやすいと思って設計しても、その言葉で対応せざる得なくなるからです。

システム開発担当者としてはこの言葉は要注意であり、恐れる言葉であることは間違いありません。

怖い言葉で無くす為に

 開発側としてこの言葉に対抗するには、やはり要求段階からしっかり対応する事だと思います。要求段階から徹底的に機能調査し抜け漏れはなくし、しっかり最終承認をユーザから得る。そしてユーザに対して適宜利用感を触れさせて確認して進めるといった、対策を行う必要があります。

 そうでなければ最後のユーザテストで、「現行踏襲されていません。使えません」と言われるリスクが高くなります。

またはその言葉を無効化させる事の方が私は重要ではないかと思います。新しいプラットフォームや新しいツールで構築する場合、そのプラットフォームに適したやり方やメリットと言うものが必ずあります。例えば現行通りではありませんが、新しい方式の方がレスポンスが非常に速いです。とか、この方法で構築する事で今後の改修スピードが圧倒的に迅速です。等です。

せっかく新しい環境で構築するのですから、従来のシステムに捕らわれず、新しい環境を使い倒し、その恩恵を十分受ける事が再構築の意義であり、目的ではないかと私は思います。


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