クラウドコンピューティングが広まるともに、一緒に広まってきたシステム構築の考え方が「エコシステム」です。
もともと日本語では「生態系」の意味になります。
IT業界でのエコシステムは少し意味が違っていますが、今のITシステムではとても新しく有効な考え方になります。今日は私の会社の実例を入れながら説明します。
ITエコシステムとはどんなシステムか
最初にITでのエコシステムとはどの様なシステムでしょうか。
ITエコシステムは、ITシステム・機能に関連する様々な機能や要素やコンポーネントが相互に連携しながら機能する全体の仕組みをとなります。これにはハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、データ、サービス、ユーザー、プロセスなど、多くの要素を含まれてきます。
ITエコシステムは企業や組織内の業務機能やビジネスプロセスをサポートし、目的を達成するために構築されます。これは、企業や組織において、ITを駆使して業務を効果的かつ効率的に遂行するために作られた仕組みになります。
つまり企業や組織が求める機能や業務を、複数のサービスを組み合わせて構築するシステムと言えます。
エコシステムで構築された実例
私が勤務する会社もクラウドサービスを利用しエコシステムで構成されています。当社のシステム構成図を例に挙げてみます。
このような構成になっています。
S社が提供するCRM、営業支援システムを中心に構成され、データや資料の保存場所としてB社のストレージサービスを利用し、電子契約ではE社のサービスに連携、W社のデータ出力機能を使って見積書などの営業資料を作成しています。
また営業の売り上げデータはO社の請求管理サービスに連携され、そこから請求書、請求データが出力されます。
このように様々な会社が提供するサービスを組み合わせて業務を行いますが、操作はほぼS社が提供するサービスの画面上から行え、ユーザは各社のサービスを意識することなく利用しています。
各社サービス間の連携はWebAPIや各社が提供する連携機能を利用しています。
エコシステムのメリット
エコシステムでの構築にはさまざまなメリットがあります。以下に、主なメリットをいくつか挙げてみます。
- 効率向上と生産性の向上
ITエコシステムにより、業務プロセスやタスクの自動化が可能になり、作業効率が向上します。これにより、従業員はより重要な業務に専念でき、生産性が向上します。 - 柔軟性と拡張性
クラウドベースのITエコシステムは、必要に応じてリソースを迅速にスケーリングできます。これにより、需要の変動やビジネスの成長に対応しやすくなります。 - コスト削減
クラウドコンピューティングを活用することで、物理的なインフラストラクチャの購入やメンテナンスのコストが削減されます。また、必要なリソースの調整が容易なため、無駄なコストを抑えることができます。 - グローバルアクセスと協業の促進
インターネットを介したクラウドベースのエコシステムは、地理的な制約を超えてアクセスできるため、グローバルな協業やリモートワークを支援します。 - リソースの共有と再利用
ITエコシステムにおいて、サービスやデータ、APIなどのリソースは効果的に共有・再利用できます。これにより、開発者はゼロからではなく、既存のリソースを活用して新しいサービスやアプリケーションを開発できます。 - 迅速なイノベーション
クラウド上でのエコシステムは、新しいテクノロジーやサービスの迅速な導入を可能にします。これにより、企業は市場の変化や競合環境に素早く対応できます。 - スケーラビリティ
クラウドベースのエコシステムは、需要の増減に応じて柔軟にスケールアウトやスケールインができるため、安定的なパフォーマンスを維持しながら運用できます。
これらのメリットにより、企業は迅速なビジネス変革や競争力の向上、効率的な業務遂行を実現できます。ただし、導入前には十分な計画とセキュリティ対策が必要です。
エコシステムのデメリット
ITエコシステムには多くのメリットがありますが、同時に注意が必要なデメリットも存在します。以下に、ITエコシステムの一般的なデメリットを挙げてみます。
- セキュリティリスク
クラウドベースのエコシステムは、データがオンラインで転送されたり、クラウド内で保存されたりするため、セキュリティリスクが増加する可能性があります。データ漏洩やサイバー攻撃に対する懸念があります。 - 依存度の増加
クラウドプロバイダーに対する依存度が高まるため、プロバイダーの障害やサービスの変更が影響を与える可能性があります。また、プロバイダーの倒産やサービス終了のリスクも考慮する必要があります。 - コストの予測難易度
クラウドサービスの利用には通常のハードウェアやソフトウェアの購入に比べ、利用料金が変動することがあります。予測が難しく、コストの見積もりや管理が難しい場合があります。 - ネットワークの依存度
クラウドベースのエコシステムは、良好なネットワーク接続が必要です。インターネット接続の不安定性や遅延がサービスの利用に影響を与える可能性があります。 - データの所在地と法規制
クラウド内でデータが保存される場合、そのデータがどの国や地域にあるか、およびその地域の法規制に従う必要があります。データの所在地と法的な規制を遵守することが課題となります。 - 運用の複雑性
複数のクラウドサービスやプロバイダーを組み合わせて利用する場合、それらを適切に統合し、効果的に運用することが複雑になる可能性があります。 - データのロックイン
特定のクラウドプロバイダーに依存してしまうと、他のプロバイダーへの切り替えが難しくなるデータのロックインが発生する可能性があります。 - 技術の進化と変更のスピード
技術の進化が速いため、導入した技術やプロバイダーが旧式化しやすく、定期的な更新と変更が求められます。
これらのデメリットは、企業がITエコシステムを導入する際に検討すべき事項であり、慎重な計画と適切なセキュリティ対策を講じることが重要です。
まとめ
社内SEとしてエコシステムの最大のメリットは開発スピードの速さと、運用のし易さだと思います。各社のサービスを組み合わせる事で独自の開発よりも数倍早くリリースできます。また各サービスのノウハウも使えます。
そして自社でハードウェアなどを保有しないので、ハード障害や障害監視も必要ないため運用が大幅に楽になります。
今はSierでもエコシステムを中心に提案して来ます。
エコシステム構成で競争力があるシステムを求める事は今後も続くと思いますので、使う方ではどのサービスが自社にとってベストか見極める事が大切になります。